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建設業界最大の課題、人材不足対策は 「AI/人工知能」でできるのか!?

建設業界の人材不足は深刻

現在、建設業界には需要面では追い風が吹いています。

・東京オリンピック
・海外観光客増に伴うホテル建設など設備投資増
・高度成長期に激増した社会インフラの老朽化、補修・改修需要
・リニア新幹線
・災害多発による国土強靱化工事需要

など、「失われた20年」と言われる不景気時代と比べ、大きく状況が好転しました。

しかしその一方で 「人材不足」、「原材料の高騰」という雲が陰を落としています。特に人材不足は、労働集約型で人材が揃わないと仕事自体が成立しない建設業界にとって、大きな問題となっています。

建設業労働者の年齢分布にM字の谷が

年齢構成の偏りも、今後に不安を与えています。下のグラフは「国勢調査」の産業別年齢分布の抜粋です。45~55歳の層を底に、M字型になっているのが目立ちます。底の部分にあたるのは、1980年前後の建設不況が厳しく新規採用を控えていた時期です。

Mの山の右側は団塊の世代で、これから大量に定年を迎え、人材不足はさらに厳しくなることが予想されています。同時にそれは、熟練の技術者、職人などが経ることを意味しますので、人数だけでなく、技能面でも不安視されているのです。

グラフ/全産業と建設業労働者の年齢分布

資料:総務省統計局「平成22年国勢調査」より抜粋
※2017年12月には、「平成27年版国勢調査」の産業別詳細データが公開される予定

国土交通省の人材不足対策「i-Construction」

そんな状況を見て、国も様々な対策を打ち出しています。特に「i-Construction」というプロジェクトで、AIやドローンなどの新しいテクノロジーを使った「ICT土木」を提唱しています。

ICTとは、「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術を表します。国はこのプロジェクトで、IT化がなかなか進まない建設業界の時計の針を一気に進めようとしています。新技術の導入で建設現場の省力化や効率化を進め、人材不足対応と魅力的な職場づくりを促進することが狙いです。

そのため、3次元データによる申請の受け付けや、検査基準の改定などに取り組んでいて、一部は既に2016年から施行されています。

引用:国土交通省・プレスリリース(2016.03.30)

人材不足の切り札として「AI」に期待

ICTのなかでも、特に「AI/人工知能」に対する期待は大きいようです。重機や建機にAIを搭載したり、写真を解析したりと、さまざまな用途が想定されています。

数年前まで、AIは期待されるというより、「人間が仕事を奪われるかもしれない」という、恐ろしい存在でした。下のリストは、野村総研が発表した、「日本で将来的にAIやロボットによって奪われる可能性が高い仕事」のリストです。

引用:野村総合研究所・ニュースリリース(2015.12.02)

この発表からわずか数年ですが、今はどちらかというと上手に活用していこうという機運が高くなっています。

建設業界は人材不足が大きく問題視されていますし、リストを見ても建設業界の仕事はほとんどありません。建設作業員(軽作業を想定しているようです)と非破壊検査員ぐらいでしょうか。それもあってか、建設業界ではAIに期待する声のほうが多いようです。

建設業界目線で見た「AIにできること」

AI、人工知能と聞くと何でもできるように思えますが、実際には何ができるのでしょうか?

専門家の間では、現在のAIは「弱いAI」と呼ばれています。これは、「1つのことしかできない」という意味です。碁をするAIは碁以外のことはできませんし、会話型AIは会話しかできません。

一般的にAIと聞いてイメージするアンドロイド的なAIは「強いAI」で、人間と同じように1人(?)で会話も、碁も、運転もできるタイプです。弱い「AI」と区別するために、「AGI(Artificial General Intelligence=汎用人工知能)」と呼ばれ、まだ実用には遠い状況です。

ただ、碁しかできないAIが世界最高峰の棋士を破ったように、弱いAIでもできることに関しては、人間より遙かに優秀ですし、それを24時間365日続けられます。できることも年々増加しています。

現在、AIが得意な分野は下の3つです。

引用:総務省「平成28年版 情報通信白書」

1)識別

音声、画像、動画、言葉の構造を把握して、内容を判断したり、過去データとの関連を割り出したりといったことが可能です。

<建設会社で使える技術>
・工事現場のリアルタイム動画から異変を瞬時に見抜く
・過去の建物や室内の白黒写真の色を判断する
・顧客の現在の家の写真からインテリアの好みを把握する
・電話の言葉から相手の質問や要望などを割り出す

2)予測

データを元に、将来予測が可能です。相関関係から割り出す方法が主流ですが、人間であれば相関を10も立てれば一苦労ですが、AIなら100でも1000でも計算できます。

<建設会社で使える技術>
・過去の工事スケジュールから、今回の工事の工期を予測する
・顧客の好みとマッチングする内装材や家具を予測する
・Web広告の過去の実績から、最も効率的な出稿方法を予測する

3)実行

目的に適った最適なアウトプットを実行できます。

<建設会社で使える技術>
・顧客の質問に対してチャットで(合成音声で、メールで)返答する
・建機を自動で操作する
・Web広告のオークションで割安な時に入札する

いかがでしょうか? 通販サイトAmazonで何かページを見ると、関連商品がレコメンド(お勧め)されますが、あれもAIでさまざまな相関を考慮して商品がセレクトされているようです。同じジャンル、同じ柄、同じテイスト、一緒に買い物した人が多い商品など、相関軸は膨大にあります。時折、全然関係なさそうな商品をお勧めされて驚きますが、何らかの相関があるようです。

Amazonのレコメンドも以前に比べて精度が高くなったように、AIの開発は進化しています。今後は感情を認識する研究が進みそうです。AIが感情を持つという大げさな話ではなく、写真や動画に写っている人の感情を読み取ったり、顧客等からの電話の口調から相手の感情を判断したりできるようになりそうです。コミュニケーションに関わる重要な資質なので、応用範囲が広そうです。

以降もAIの進化は続きます。AIの進化予想のステップを見ると、数年後には社員教育や秘書的な役割はAIが担うことになりそうです。そうして、インターネットやスマートフォン同様、AIも一気に仕事や生活に浸透すると予想されています。

引用:総務省「平成28年版 情報通信白書」

建設業界で実用化&実用化目前のAI技術

最後に、実際に建設業界で活用されているAI技術をいくつかご紹介します。まだ大手ゼネコンが多いですが、現場に入ってくることで、より身近になりそうです。
●AIが数分で施工計画案を複数提案
国交省の「i-Construction」でも重要視されている「AIを使った3次元(3D)モデリング」技術で先頭に立っているのが大手ゼネコンの鹿島です。AIとBIM(後述)を活用し、建設物の仕様や敷地、コストや工期などの情報を入力すると、数分で条件に合った3次元の施工計画を複数パターンで提案するシステムを開発中で、数年での実用化を目指しているそうです。

施工計画の作成は現在、人間が1週間程度かけて作成しているとのことで、AIなら数分と大幅に短縮できます。複数案提案されるため、最後に人間の目を通すことでデータに表れない事情も考慮することが可能です。

鹿島はBIMという3次元建設情報データベースの開発・提供でも進んでいます。BIMとは、Building Information Modelingの略で、建設物の3次元デジタルモデルに、コストや工程管理などの周辺情報を付加するシステムです。今回のAIによる施工計画案作成システムは、BIMで収集した施工データの蓄積によって可能になりました。鹿島では、2017年4月にはBIMの専門会社も設立し、中小建設会社に最新システムを提供しています。

AIが工事写真から進行状況を判定

大林組はAIを利用して内装工事の進み具合を判定する「工程認識AI」を開発中です。工事現場で撮影している記録写真を解析し、写っている資材の完成割合などから、工程のどこまで進んでいるかという進捗状況が判定されます。たとえば大型マンションのように同時に多くの工事が平行して行われる物件の管理が楽になりそうです。撮影をドローンやロボットで行えば、見回りや撮影の手間もなくなり、検査を無人化することも可能になりそうです。

この技術は、AIに工事中の写真、完成した写真、資材の写真などを解析させることで、AI自体が工事の最初から完成までの状況を学習し、各状態に特有の法則性やルール、パターンなどを見つけ出す、ディープラーニング(深層学習)を行なうことで可能になりました。

熟練の技が必要なシールドマシンをAIで操作
清水建設はAIを活用して、トンネルの掘削で活躍するシールドマシン(岩盤を砕く超大型のドリルのような機械)のオペレーションを行なうソフトの開発を進めています。これまでは熟練のオペレーターのノウハウとテクニックで行われていたのですが、熟練工の減少と生産性向上を目指してAI化に取り組んでいるそうです。

具体的には、熟練オペレーターの操作を記録した膨大なビッグデータをAIで行動分析し、熟練オペレーターの操作をソフトとして再現することを目指しています。実用化も遠くない将来のようです。

まとめ

AIによって、人間が最終判断を下すまでの作業や管理、機械の操作といった部分はAI化が進んでいきそうです。営業のように、AIに代替されにくい職種でも、AIが搭載されたMA(マーケティングオートメーション)を通じて契約前の基礎的なコミュニケーションを自動化するなど、効率化が進んでいきそうです。

AIによるサポートを上手に使い、マンパワーを適正配置することで、人材不足を緩和することが今後の課題と言えそうです。今すぐAIで人材不足を解消することは難しいですが、この流れに乗り遅れないよう、アンテナを張っておきましょう。

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